サバからマグロが産まれる!?
タイトルだけ見ると「なんのこっちゃい?」ということになりますが、真剣にそんな研究をしている人の話。
異なる魚の卵を産むなんて何めちゃくちゃなことを言っているんだろうと思ったらヤマメにニジマスを生ませることはもう出来ているという現実。SFでも思いつかないようなめちゃくちゃな話にも感じますが、これがこの本は研究者の試練と熱意と奇跡にあふれた本でした。
そもそもなんでそんなことをするんだろうと思ったのですが、あの馬鹿でかいマグロってやっぱり成長に何年もかかるそうです。もちろん産卵可能になるまでもそれなりの時間がかかるとか。大きなマグロをテレビやセリで見て(築地のセリを見に行ったことがある)「デカイ!」なんて思うことはあっても「あのサイズになるまで何年かかるんだろう」なんて考えたことはありませんでした。
そんなおかげでマグロを養殖、増殖(稚魚を放流することらしいです)するにも稚魚を得るためにあの巨大サイズのマグロを飼育して…となると施設が巨大になるし、時間もかかる。さらに産卵期もあるのでそれを年1回以上にするための設備も…と考えると結構大変みたいです。
実際その正攻法でアプローチをしているところもあるそうですが、この本ではゲリラ的に1年でで産卵可能になるサバにマグロの卵と精子が作れるようになれば時間、施設などの問題が解決できると…
なんて書いてありますが、冷静に考えればかなり無茶なことを言っています。
でも、この本を読んでいくと魚の特性を踏まえた上で非常にチャレンジングなことをしています。無茶な気もしますが、実際試してみて成果が出ているのが素晴らしい。
本の内容も一歩ずつ研究の歩みが書いてあって、目標に向かって一歩ずつつ着実に階段を上っている感じがわかってすごく面白いです、そこには実際には色々な失敗や生き物を使っている以上はさらりと書いていることに実はものすごく時間がかかっているであろうことは想像がつきます。また、そこにはとりあえず練習としてやったことが大きな一歩につながる奇跡的なことが起こるのですが、魚をただの実験道具とは見ずに向き合っている姿勢を考えると必然とも言えるようなことも起きたりと、本当に読んでいて面白い。
現時点はサバからマグロが生まれるまでは至っていないようです。ただ本にも書いてある通り、地図にない道を進んでいるのでゴールまでの距離がわからないのですが、確実にゴールに近づいている感があってすごく楽しめる本でした。