孤独なバッタが群れるとき
「砂漠のリアルムシキング」というブログで一部で非常に話題だった前野 ウルド浩太郎氏の著書「孤独なバッタが群れるとき」を読みました。
で、購入したものの積読状態だったのですが、読み始めたらぐいぐいと引き込まれた。
バッタの大発生はニュースとしては知っていてもバッタの種類まで知る事は無かったであろう事なのに、本書を読み始めるとサバクトビバッタがなんとも魅力的な研究材料に見えてくるから不思議だ。
本書はサバクトビバッタが何かの拍子に大発生する原因をさぐる研究に関する学術書なので、その謎と解明されていく様子が数字やグラフを駆使して記載されています。本来ならば堅苦しい話になるはずなのですが、その謎に迫るための地味な作業の様子。地味な上に目隠しをした雌のバッタの触覚を雄のバッタの触覚でこする作業を繰り返すとか、ここだけ読むと奇想天外なのですが本書を読み進めると群生相化の原因を絞り込むため一つずつ丹念に色々な条件を排除していくと行き着く先にある実験なのが納得出来る所であり、その様子が専門家でなくても分かるように書かれていてこの本が最高に人の知的好奇心を刺激する所だったりします。
また、この研究を進めていく中で著者が一人の研究者として成長してく様子が重なってただの学術書ではない深みも出ています。
そんな訳で、多くの人にとってどうでもいいバッタの話でありながら、これだけ読ませる本書は本当にお勧めです。
そうそう、著者がハフィントン・ポストに寄稿した「前野ウルド浩太郎: ハリネズミのジレンマに物申す」を読んでいたら、今年度の生活費はこの本の印税に頼っているとの話なので気になった方は是非。バッタの解剖写真以外は後悔する事は無いと思います。
最後に、Amazonでこの本を見ていると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に出てくると「アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に 」と「右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化」も面白そう。てか「フィールドの生物学シリーズ」がいい所を付いている模様。高いのと未読の本がたまっているので少しずつ買う事にする。