視覚に関する本を2冊ほど読んだ
たまたま視覚に関する本を2冊続けて読んだんだけど、面白かったので感想なんかを書いてみる。
まず、1冊目はオリバー・サックスの「見てしまう人びと:幻覚の脳科学」
先日オリバー・サックス死去のニュースを聞いて「最近オリバー・サックスの本を読んでいないなぁ」って感じで適当に選んだ本です。
オリバー・サックスといえば「レナードの朝」で有名かと思いますが、小さい頃から目の前の自分が見ている赤は他の人も同じように赤く見えているのかが不思議でしょうがなかったりと、認知、ひいては認知を司る脳についていろいろ興味があったりしたのでオリバー・サックス好きだったりします。
で、今回はいわゆる幻覚についての脳科学から考える本です。
よしかわ自身も閃輝暗点と呼ばれる偏頭痛の前兆現象となる幻覚をちょくちょく見るようになったので他人事ではなかったりします。
ちなみに、こんなのが目の前に現れます。
いきなりこんな幻覚が現れるのではなくて、メガネに水滴がついような感じで最初は一点が見にくい場所が視覚に現れるんだけど、徐々に広がってこんな感じになる。
で、そのあと頭痛があるかと何もないんだけどね。しばらく字が読みにくかったりするのがなかなか面倒だったりします。睡眠不足、チョコレートの食べすぎとかこの幻覚が現れるパターンを把握したので、気をつけている…というか睡眠不足くらいか気をつけるのは。
ではなく。幻覚の話。まずやっぱりオリバー・サックスの本が上手いのは最初に出てくる幻覚の症状を訴えた人の話が数年前に視力を失った全盲の老人の話から始まるあたり。当然「全盲の人が幻覚?」なんて感じで引き込まれるわけです。
そこから幻覚に関する興味深い話がいろいろなパターンに分けて症例と脳科学の分野からの解説がわかりやすく続きます。
ちなみに、幻覚と聞くと目に見えるものをイメージしますし、タイトルもまさに「見えてしまう人びと」なので、まぁ普通そっちをイメージしてしまうわけですけど、見えるもの、聞こえる方面、いわゆる幻聴。そして匂いに関する幻嗅などについての症例が出てきます。結局のところ最終的な処理装置(?)の脳の損傷、もしくは入力の断絶による暴走などによって幻覚が起きるので各種感覚器官で存在しないものをまさに幻覚としてとらえてしまうようです。
面白かったのが臨死体験を調べてみると驚くほど画一的で、心臓停止に伴う血圧低下で脳への血流が減った時(まぁ、実際に死にそうなタイミングだけど)に起きうるので脳の活動と血流の観点から研究している人がいるとか。
神の存在を感じるような感覚も癲癇患者の脳波をモニタリングし恍惚発作が(右?)側頭葉の癲癇焦点(癲癇を起こす脳の部位)発作と一致することを発見したとか、脳の特定部分に電気刺激を与えると幽体離脱のような感覚が起こるとか容赦がない話がいろいろ書いてあります。
最終的な判断期間の脳が思いのほか微妙なバランスで成り立っていてちょっとバランスが崩れると、いろいろ症状が現れるってオリバー・サックスの相変わらずの話なのですが、今回も興味深く読むことができました。
で、ちょうどこの本を読んでいる時に会社の人が面白いって教えてくれたのが「目の見えない人は世界をどう見ているのか」って本。
なんか関連がないようである本なのですが気になって続けて読みました。
ただ、あまり視覚の話ではなかったかな。
視覚的な話で言えば、目が見えない人からすると目が見える人は視覚の印象が強すぎてかえって目の前の現象を理解できていないことが多いのではという話、富士山の例が書いてありましたけど富士山の理解が目が見える人からすると末広がりの二次元的な理解が、目が見えない人はお椀をひっくり返したような形として本来の形に近い形として理解しているとか。読んでいて思い出したのはやっぱりオリバーサックスの「色のない島へ: 脳神経科医のミクロネシア探訪記」って本。ミドイ色でもちゃんと熟したバナナを選べる色盲の人に色盲ではない人は色でだけ判断するけど、ちゃんと香りとか、柔らかさとか多角的に判断すれば本当に熟したタイミングがわかるとか言われる話がまさにそれだなと。
「目の見えない人は世界を…」のポイントはそれよりも過剰もしくはアンタッチャブルな扱いを受ける障害者と 社会のなかでの扱いや関係性に関する本と考えたほうがいいと思います。ただその観点で読み始めると、よくある本といえば、よくある本かなぁ…
どちらかといえば科学っぽい本を読みたかったよしかわにはちょっと肩透かしでした。今度これを読んでみようかな「脳のなかの天使」。でもまだ読んでいない本がやたらある…そして諸般の事情で「アメリカ大都市の死と生」を先に読まないといけないという…